吸水したフィラメントを復活できないか?

フィラメントは長期間大気に触れると吸水してしまい、造形時にブツブツになったり、ノズルが詰まったりします。【PLA吸水率検討参照】

 

一旦吸水してしまったフィラメントを何とか復活する方法はないかということで、フードドライヤーで乾燥機を作ってみました。

 

フィラメントを乾燥させるには、常に乾燥した空気を送り続けて外に排出する必要があります。樹脂内部の水分が拡散して表面から蒸散するには温度だけでなく乾燥した空気が必要です。単純に加熱するだけであればオーブンなども考えられますが、密閉空間で加熱しても低温の場合はすぐに空気が平衡状態になってしまうのであまり乾燥は進みません。フードドライヤーは下から乾燥エアが送り込まれて上に空気が抜けていくのでフィラメントの乾燥には向いている構造です。

 

フィラメント乾燥機の作り方

安価なフードドライヤーを利用して、フィラメント乾燥機を作ります。

 


調達したフードドライヤー。\3,980円。直径23.5cm、高さ22.8cm。1kg巻きのスプールであればこのサイズで十分入ります。設定温度は35~70℃。

 


中身はこんな感じ。5段のトレーがあり、下から温風が吹き出して、上の穴から抜けるようになっています。

 


上から見た様子。

 


このままではフィラメントを載せても入りませんので簡単な加工をします。

 


トレイを取り出します。

 


外周の部分をニッパーで切ります。

 


カットした後。中央のカットした部分は不要です。トレイを1段だけ残し、後はすべてカットします。

 


カットして積み重ねたところ。所要時間10分程度。

 

フィラメント乾燥用ドライヤー
カットしなかった1段目のトレーを一番下にして、上にカットしたトレーを載せ、フィラメントを入れます。これで完成です。フィラメントスプールがすっぽり乾燥機に入ります。後はお好みの温度にセットしてスイッチを入れるだけです。

 

乾燥で気を付ける点として、PLAの場合はガラス転移温度(約55℃)以下にする必要があります。ガラス転移温度を超えるとPLAが軟化してくしゃくしゃになってしまいます。

 

PLAフィラメント乾燥テスト

早速テストしてみます。今回の実験では吹き出し温度が45℃になるよう設定しました。(本体設定50℃)

 

実際にPLAフィラメントを投入し、乾燥前吸水率を0.35%として乾燥時間でどれくらい吸水率が変わるか調べたのが下のグラフです。

 

フィラメント乾燥による吸水率の変化

 

温度が低いので時間がかかりますが、それなりに乾燥ができることがわかりました。実際にテストで乾燥フィラメントを使ってみましたが、だいたい4時間くらいあれば3Dプリントの実用上は問題なく造形できる感触です。さらに乾燥時間を長くすれば、もう少し吸水率は下げられそうです。

 

注意事項

上記の通り、フィラメントの乾燥で水分はある程度除去できます。乾燥でフィラメンのト詰まりやベッドの定着不良などは解消できる可能性があります。ただし一旦進行した加水分解は元に戻すことはできません。加水分解すると流動性が向上して線幅が細くなり、積層強度が低くなることがあります。この場合はスライサーの吐出レートを上げて補えることがあります。