PLA/PBSブレンド樹脂

PLAの脆さの改善の一つとして、違う樹脂を混ぜてブレンドする方法があります。
軟質樹脂を混ぜることで、硬いPLAが柔らかくなります。
身近にあるやわらかいものでは、ゴムがすぐに思いつきます。
ただし、単純に輪ゴムに代表されるような天然ゴムとPLAを混ぜても、
逆にもろくなってしまいます。

 

違う樹脂同士を混ぜても、すぐに分離してしまい、
目で見て混ざっているようでも実際は分離していることがあります。
水と油を混ぜても、すぐに分離するのと同じです。
樹脂同士の混ざりやすさを表現するのに、相溶性という言葉が使われます。
相溶性がよければ混ざりやすく、悪ければ混ざりにくいということです。
樹脂を混ぜて新しい材料を作る場合は、必ず相溶性を考える必要があります。

 

PLAと比較的相溶性がいいと言われれている樹脂で、
生分解性を失わず、かつ軟質である樹脂はPBS、PCLなどがあり
文献がたくさん出てきます。

 

今回は比較的耐熱性が高く、生分解性プラとしてそこそこ流通している
PBSを選んで、メーカーさんにPLAとPBSをコンパウンドしてもらい、
ブレンド樹脂ペレットを作ってもらいました。

 

試作内容

 

こちらからの依頼内容

ペレットはこちらで調達したものがあったので、
これをメーカーさんに送ってコンパウンドだけやってもらいました。
内容は以下の文面でお願いしました。
樹脂をあまり知らないシロウトの依頼ですが、
この程度の内容でも動いてもらえました。

支給樹脂 PLA(ポリ乳酸) 融点:160℃

PBS(ポリブチレンサクシネート) 融点:118℃

混合比率 PLA : PBS = ? : ?
希望ペレット仕様 Φ3mm x 3mmにて5kg以上
希望測定データ MFR、アイゾット衝撃値、降伏応力、破断伸び

(PLA、PLA/PBSブレンド品、それぞれに対して測定)

 

 

相談の上、以下の内容でコンパウンドしてもらいました。

加工機 二軸押出機、30mm、L/D=32
仕込み量 PLA 12.25kg、PBS 1.75kg (合計14kg)

 

14kg投入し、加工ロス1kg、評価で2kg使用。製品確保量は約11kg。
試作費用がそれなりにかかりますが、
単発で少量試作いただけるところは貴重です。

 


PLA/PBSペレット加工中の様子。
二軸押出機ダイヘッドから出た溶融樹脂ストランドが
冷却水槽に入って冷やされ、
ストランドカッターでカットしてペレットの形になります。

 


PLA/PBSブレンド樹脂ペレット完成品。
PLAは透明ですが、PBSが結晶性樹脂で不透明のため
半透明の仕上がりになります。

 

 

物性評価結果

 

PLA(ベース樹脂)
MFR(*1) @10.92 A11.04 B11.22 g/10min.
アイゾット衝撃(*2) ハンマー振り上げ角度

@132° A132.5° B132° C133° D134°
平均 132.7°
衝撃強度 1.58 kg・cm/cm2

引張測定 降伏応力 : @66.1 A66.2 B66.5 MPa

破断伸び : @6.25% A6.25% B6.25%

 

PLA/PBS(ブレンド樹脂)
MFR(*1) @13.26 A13.32 B12.6 g/10min.
アイゾット衝撃(*2) ハンマー振り上げ角度

@130.5°A131.0°B131.0°C130.0°D130.0°
平均 130.5°
衝撃強度 3.14 kg・cm/cm2

引張測定 降伏応力 : @55.2 A54.0 B55.0 MPa

破断伸び : @12.5% A10.0% B8.75%

 

(*1) 190℃、2.16kg、n=3
(*2) n=5平均

 

PLA比較で、PLA/PBSブレンド品が
アイゾット衝撃値、破断伸びともに2倍に向上していることがわかりました。
文献通りの方向性で、まずまずの結果です。

 

引張試験後サンプル写真


引張試験後のサンプル。上がPLA、下がPLA/PBSブレンド品。
PLA/PBSブレンド品の方が破断伸びが大きいことがわかります。

 

 


破断部拡大写真。PLAはほとんどネッキングは見られません。
ガラスのようにパキッと割れた感じがします。
PLA/PBSブレンド品はネッキングを起こして伸びた様子が見られます。

 

アイゾット衝撃後サンプル写真


アイゾット衝撃後のサンプル。上がPLA、下がPLA/PBSブレンド品。

 


ちょっとわかりにくいですが、PLAの方がガラスっぽい感じがします。
顕微鏡で破断面を観察すればさらに何かわかるかもしれませんが、
費用の関係で解析は行いませんでした。

 

プレートサンプル(外観確認用)


上がPLA、下がPLA/PBSブレンド品。
左側がシボなし、右側がシボあり。
PLA/PBSブレンド品は若干パールっぽい感じで
キラキラしています。PBSの分散サイズがやや大きいため、
キラつきとして見えているものと推定されます。

 

ブレンドによってアイゾット衝撃は向上しているので
実用上はそこそこ相溶性はありそうですが、
完全相溶ではないものと思われます。
これもSEMで見てみるとPBSがどんなサイズで分散しているかわかり、
相溶性解析ができると思われますが、
費用の関係でこれ以上は行いませんでした。

 

 

これをフィラメントに引いて、3Dプリンタで造形します。
続きはこちらで。
PLA/PBSの3Dプリントテスト