各メーカーフィラメント材料の融点とガラス転移点 実測データ一覧

各メーカーのフィラメント材料に対する融点とガラス転移点の実測データ一覧です。
FFF 3D Printing in Electronic Applications: Dielectric and Thermal Properties of Selected Polymers

 

各メーカーフィラメント材料の融点とガラス転移点 実測データ一覧

 

No. Material Color Manufacturer Tg(℃) Tm(℃) Tox(℃)
1 ABS-T Transparent Filament PM(Chudobin, CZ) 107.5 - 351
2 ABS with carbon fibers (ABS-CF) Black Kimya(Nantes, FR) 100.2/110.3 - 302
3 ABS with aramid fibers (ABS-AF) Black Kimya 100.1/111.2 - 336
4 ABS ESD Black Smartfil (Alcalá la Real, ES) 109.1/125.8 - 384
5 ASA Galaxy black Prusa polymers (Prusa Research, Prague, CZ) 103.7 - 332
6 Copolyester XT (cPEST) Black ColorFabb (Belfeld, NL) 80.9 - 341
7 Copolyester with carbon fibers XT-CF20 (cPEST-CF) Black ColorFabb 81.4 - 356
8 PC/ABS White Fillamentum (Hulin, CZ) 117.1/143.3 - 337
9 PC Natural Prusa polymers 147.5 - 324
10 PETG Transparent Filament PM 81.2 - 376
11 PETG Urban gray Prusa polymers 78.7 - 368
12 Recycled PETG (rPETG) Blue EkoMB (Tabor, CZ) 78.1 - 347
13 Recycled PETG Milk white EkoMB 78.9 - 353
14 PP 2320 (PP) White Fillamentum - 165.5 239
15 PLA Azure blue Prusa polymers 59.7 150.6 267
16 PLA Galaxy black Prusa polymers 60 149.6 257
17 PLA Red Creality (Hong Kong, CN) 60.5 164.6 263
18 Nylon FX256 (PA12) Blue Fillamentum - 178 327
19 TPU 98A Luminous green Fillamentum - 195.8 322
20 TPE 88A Transparent Filament PM - 155.2 238
21 TPE 85A White Verbatim (Charlotte, NC, USA) - 184.5 226
22 TPE 32D Nature Filament PM - 157.1 249
23 TPEE 40D White Filatech (Al Hamra Island, RAK, UAE) - 158.8 224
24 Vinyl 303 (PVC) Natural Fillamentum 75.7 - 265

Tg:ガラス転移点
Tm:融点
Tox:熱酸化開始温度。STA(同時熱分析)によって測定

 

以下は文献における補足説明です。

ASAはABS および ABS-T と同様の化学構造を持つ非晶性樹脂であることが確認された。

 

ABS-Tは、ABSとの比較からメタクリル酸メチルによって改質されている。

 

ASA (103.7 °C) と ABS-T (107.5 °C) のガラス転移温度は非常に近い。メタクリル酸メチルによる ABS-Tの改質は熱分析結果に大きな影響を与えていない。

 

ABS にカーボンまたはアラミド繊維 (2, 3) を添加するとTgが2つ現れる。これらはABS-Tとは異なり、わずかに異なる2つの相を持つことが示唆される。STA分析から炭素繊維、アラミド繊維が少量添加されていることが判明した (<1%) 。

 

ABS ESD のTg(109.1℃) は、ABS-TのTg (107.5℃) と非常に近いが、ABS EDSは125.8℃に2 番目のゆるやかな転移も確認できる。さらに、ABS ESDは STAからは炭素繊維の添加は確認されなかった。導電特性の結果からは、ABS ESDは導電性コポリマー添加による改質と推定される。

 

PCのTgが147.5℃であるのに対し、PC/ABSではそれぞれの材料のTg、つまり ABS (117.1 ℃) と PC (143.3 ℃) に対応する2つのガラス転移点が検出された。

 

cPEST XT と cPEST XT-CF20 (Eastman Amphora AM1800 3D polymerベース) のTgはそれぞれ80.9℃ 、81.4℃であるが、ABS(2, 3) とは異なりTg に大きな影響を与えていない。cPEST XT-CF20 には多量の炭素繊維 (STA による検証で添加量は約 20%と確認)が含まれているため、コンパウンディングの際の別要素の影響である可能性がある。

 

PETGのTgは78.1℃ ~ 81.2℃ の範囲であった。最も高いTg はFilament PMによって製造された透明 PETGで、着色された材料 (材料番号 11 ~ 13)ではより低いTgとなった。Tgの違いは、(i) 顔料、(ii) 製造業者とその製造技術の違い、(iii) 原料樹脂の品質によって影響を受けている可能性がある。それにもかかわらず、同じメーカー (EkoMB) が製造した色の違いのリサイクルPETGではTg 78.1℃ と 78.9℃で非常に近い値となっている(12 と 13)。

 

PLAをベースとした結晶性樹脂では、Tgは59.7℃ ~ 60.5℃ と狭い範囲にあった。ただしTmは約15℃と差が大きい結果であった。 Prusa polymersのTm は 149.6℃ および 150.6℃ であり、Crealityの 164.6℃ とは差があることから、Tmの差は色素が主な要因ではないと考えられる。各PLAは結晶化に関連する顕著な発熱ピークが観測された(結晶化温度は15が121.9℃、16が126.8℃、17が116.4℃)。

 

PP、PA、TPE などの結晶性樹脂は融点のみが観測された。PPは典型的な結晶性樹脂で、複数の吸熱融解ピークを持つことが知られている。メインピーク温度は165.5℃でもう一つのピーク温度は約120℃だった。

 

FilamentumのNylon FX256 の PA12 (PA12) の175℃の融点は、他文献によるPA材料の融点と一致していた。

 

TPU 98Aはすべての軟質材料の中で最も高いTm (195.8℃)を持っていた。これはハードセグメント (ブロックコポリマー) の融解によって起きている。TPU 98AのTgはゼロ℃より低く、分析温度範囲を外れていたためソフトセグメントの融解は観測されなかった。構造的に類似した TPE 88A、85A、 32D (20 ~ 22) は、それぞれ異なるTmを示した。

 

同じメーカーが TPE 88AとTPE 32D を製造しているが、TPEE 40Dもこれらに近い結果であった。